2007年3月16日 (金)

「輪違屋糸里(下)」 浅田次郎

壬生浪士組は「新選組」として認められ、軌道に乗ったように見えた。
しかし近藤勇の一派は会津藩から芹沢鴨を斬るように命じられていた。
水戸藩との騒動で、副長の新見錦を切腹に追い込んだ土方歳三。
そして…

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輪違屋の糸里や桔梗屋の吉栄までをも巻き込んだ芹沢鴨抹殺計画がうごきだす。

菱屋のお梅は、一時はうまくいくように見えたが、やはり太兵衛とはうまくいかず…。

物語はクライマックスに近づいていく。
本物の武士である芹沢鴨に対して、所詮百姓上がりの近藤勇たちが闇討ちを仕掛ける。
そこには、訪ねてきたお梅、糸里太夫、吉栄太夫という、それぞれの役目、運命を背負った女たちも居た。

百姓が今まで新選組を支えてきた武士を切るということ。
それは「してはならぬこと」なのではないのか…。

それにしても、必死に生きる女たちが心に残ります。
芸妓である糸里と吉栄、八木家のおまさ、前川家のお勝、菱屋のお梅。
そのなかでも、京都言葉が多いなかで流暢な江戸弁のお梅姉さん。
美人で頭も切れる彼女のような女性が生きる時代ではなかったのでしょうか。
「あのおなごが、男やったらなあ」

そして、今まではこのように描かれなかった芹沢鴨。
裏庭で”ろうず”を植える芹沢など誰が想像しただろうか。
今までの認識では芹沢鴨=悪であったのですが、違う角度から見た新選組、「壬生義士伝」とは違う意味で感動させていただきました。

武家出身の永倉新八と斉藤一は、この中では対照的に描かれています。
陽気で一本気な永倉とクールな斉藤。
でも、このふたりは間違いなく本物の侍なのでしょう。

上巻から読んでいて、個人的にずっと気になっていたのは、いくら土方に頼まれたといっても糸里天神が本当に平間と関係を持ったのかということでした。
下巻を読んだ今、本当だった(しかもその後も続いていた)と解りましたが、なんとも切ないことでした。

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2007年3月10日 (土)

「輪違屋糸里(上)」 浅田次郎

「壬生義士伝」の浅田次郎先生の新たな「新選組」。
今回は、近藤勇とともに新選組局長だった芹沢鴨が中心。
物語の多くは、以前から京都に住んでいた人々、とりわけ女の人から見た視点で描かれている場面が多く、会話の中にも京都の言葉が数多く使われています。

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タイトルの「輪違屋糸里」というのは、輪違屋(わちがいや)の糸里(いとさと)という女性のことです。
(最初はどう読めば良いのかわかりませんでした)

上巻は、壬生に集った浪士たちが「新選組」という名前をもらうまでの出来事。
幼いころ輪違屋に連れてこられて、もうすぐ太夫になるのではないかという糸里。
新選組内でも近藤勇の一派とは馴染まない芹沢鴨とその仲間。
芹沢鴨の傍若無人な振る舞い。
隊士を住まわせている八木家、前川家の妻たち。
芹沢鴨の情婦である菱屋のお梅。
「新選組」として認められると、芹沢鴨も見直され以前よりも一目置かれるようになる。

今までは水戸藩出身の暴れ者、というのが一般的な芹沢鴨のイメージでしたので、このように書かれたものは見たことがありませんでした。
おそらく策略家の土方歳三とのかかわり合いが、物語の中で大きな部分を占めるのでしょう。

置屋に入ってきた少女は禿(かむろ)と呼ばれ、しきたりや芸事を覚えていき、半夜(はんや)から鹿恋(かこい)、天神(てんじん)、太夫(たゆう)と出世していくそうです。
この太夫というのは、容姿に加えて茶道、舞、楽器や、立ち居振舞いにおいても一流であることが求められる大変な立場なのだそうです。
よく似ていますが芸事をしない花魁(おいらん)とは違うもので、帯の結び方も花魁が前に垂らすのに対して、太夫は心の字を象って結んでいるとのことです。
ここに登場する糸里は、現在は天神ですが、実際はもう太夫になろうかという立場です。

上巻では糸里の出番はそう多くありませんが、下巻では土方、芹沢とどのような関係になっていくのでしょう。
下巻を読むのが楽しみです。

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