2008年7月 8日 (火)

「覘き小平次」 京極夏彦

「嗤う伊右衛門」に続く、古典を題材とした小説。

覘き小平次 (角川文庫 き 26-12 怪BOOKS) Book 覘き小平次 (角川文庫 き 26-12 怪BOOKS)

著者:京極 夏彦
販売元:角川グループパブリッシング
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存在感が希薄で薄暗がりを好み、押入れから世間を覘いている変人、小平次。
演技も下手な大根役者だが、ひとたび幽霊の役を演じれば皆を震え上がらせる。
いや、演じているのではない。
小平次は幽霊になりきってしまうのである。

先天的に自分の存在を消してしまう男、小平次。
たしか、アルセーヌ・ルパンが主人公のモーリス・ルブランの小説で、尾行者をまいてしまう男が出てきたような…、一種の才能なのでしょうね。

一緒に住んでいて夫婦である”お塚”ともまともに目も合わせない。
お塚は、京極作品によく出てくる「ちょっと蓮っ葉だけれど肉感的な好い女」。
普通なら考えられないですが、小平次はお塚に悪口を言われ放題です。
お塚は小平次が大嫌いですが、信頼関係はあるらしい。(不思議です)

小平次に、久しぶりに舞い込んだ幽霊仕事。
それは、小股潜りが企てた「仕掛け」でありました。
久しぶりに小股潜りの登場。(又一本人は登場しませんが)
今回は「事触れの治平」が小平次とかかわっていくことになります。
さらに悪党共も加わって…、小平次はどうなってしまうのでしょう。

「我思う、ゆえに我あり」 (デカルト)
今回の命題は存在とは、自分とは、生きるとは何か。
簡単なようで考え始めると難しい問題です。
むしろ、このようなことは気にしないで生きていけたら幸せなのかもしれませんね。

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2008年2月 3日 (日)

「鉄鼠の檻」 京極夏彦

京極堂シリーズの再読です。
これは当時、新書版で購入したものです。

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス) Book 鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
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僧侶達が、何かに見立てられたように次々に殺されていく。
しかし、警察を含めた一般人には、世俗とかけ離れた山奥の寺院に住む僧侶たちの生活や思考を理解する事ができない。
偶然にも居合わせた京極堂をはじめとした面々も加わって…。

今回のテーマは「禅」。
初めて読んだときはストーリーこそ理解できたものの、この「禅」というものについての理解度が薄く、読後の感想もいまひとつであったような気がします。
それが今度再読してみたら、「解る」。
いや、「解った」と言葉にしてしまうと、そうではないのかも…。
とにかく以前より理解度が深まったのは確かです。

「悟る」ということは修行の最終目標ではない、「悟り」と「修行」は同じものであるらしい。
そのための修行やストイックな生活、お坊さんて結構大変なんだななんて思ってしまいます。

今回のゲストは「姑獲鳥の夏」に出ていた久遠寺老人。(大活躍です)
そして新登場は、骨董品店「待古庵」の今川雅澄、軍隊では榎木津の部下でした。
ストーリーテラーである関口は相変わらず「鬱」気味ですが、それゆえに他人とは視点が違っていたりしてなかなか興味深いところです。
しかし今回あらためて存在感を感じたのは、何といっても探偵「榎木津礼二郎」、この人はまさにスーパースターです。(恐れ入りました)

今だったら、知り合いに十分な説明をしたうえで薦める事ができます、再読は良いですね。

それと、「姑獲鳥の夏」から再読してみると、過激な描写が無いので目立たないのですが、京極作品には性的にえげつない出来事が結構多いような気がするのは私だけでしょうか。

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2007年12月15日 (土)

「狂骨の夢」 京極夏彦

先日、「魍魎の匣」を再読して感動。
次は「狂骨の夢」。
確かに家にあったはずなのだが…、またまた見つかりません。
そうするとますます読みたくなって、文庫本を入手。

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫) Book 文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
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この表紙は記憶に無いので、以前は新書版で読んだのだと思います。
いつも思うのですが、文庫版の表紙、いつ見ても良いですね。
張り子人形作家の「荒井 良」 氏の作品だということですが、(特に女性の)雰囲気がたまりません。
「化けものつづら」という写真集も出されているらしいので、機会があれば見てみたいと思います。

化けものつづら―荒井良の妖怪張り子 Book 化けものつづら―荒井良の妖怪張り子

著者:荒井 良
販売元:木耳社
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これが張り子の人形だということですが、本当に信じられないことです。


海の側に住む朱美という女。
昔、人を殺したことがあるというが…。

骨に対しての恐怖体験を持つ牧師、白丘。
幼いころの夢にこだわり続ける元精神科医、降旗。

木場がかかわることになった金色髑髏事件。

読み切るのは二回目ですし、京極堂の「憑物落し」のために、できるだけ読み飛ばさぬように…。
(でも、宗教や精神医学等のところは少々辛いものがありました)
それに今回は京極堂の登場がやけに遅いのです。
そのかわり、一晩かけての「憑物落し」、充分に堪能させていただきました。
新たな伏線等の発見もあり、再読でも(いやむしろ再読のほうが)楽しめることを発見。
「鉄鼠の檻」以降は新書版を保有していますので(確認済)、積極的に再読していくつもりです。

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2007年11月21日 (水)

「魍魎の匣」 京極夏彦

映画化されたと聞いてもう一度読んでみようと…。
確か家にあったはずなのですが…。

魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫) Book 魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
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結局、新たに文庫版を入手することになりました。
映画版のキャストなどは、正直にいうと疑問も残りますが…。
映画は小説とは表現方法が違うので、「別もの」と考えたほうが良さそうです。

再読ですからあらすじは解っていたつもりでしたが、結構忘れていたことも多く、さらに新たな伏線や見逃していた事実などが発見され、初回同様(いやそれ以上かも)に楽しく読み切ることができました。
「姑獲鳥の夏」よりは解りやすく、登場人物の個性さえ理解していれば、この小説から京極堂シリーズに入っていっても良いと思います。
面白いです。

それと、新たに読みたい小説ができました。
それは、この小説の中に出てくる関口巽先生の単行本です。
「蒼ざめたものを持って」「温泉郷の老爺」「E.B.Hの肖像」「嗤フ教師」
「イデオロギヰの馬」「天女転生」「舞踏仙境」「目眩」
タイトルを見ているだけで興味津々です。
それから久保竣公の「蒐集者の庭」「匣の中の娘(未完)」も読んでみたいですね。

今思い返すと、あの頃は「姑獲鳥の夏」を読んでから、「魍魎の匣」、「狂骨の夢」、「鉄鼠の檻」、「絡新婦の理」、「塗仏の宴」と、駆け足で読んでいったものでした。
ちょっと急ぎすぎたかも…。

もう一度読み返してみようかと思います。

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2007年11月10日 (土)

「百器徒然袋・風」 京極夏彦

薔薇十字探偵社の榎木津礼二郎の活躍が爽快!
その上、京極作品としては短編で読みやすいので、前作「百器徒然袋・雨」から楽しみにしておりました。

文庫版 百器徒然袋―風 (講談社文庫) Book 文庫版 百器徒然袋―風 (講談社文庫)

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
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登場人物や事件などは、「姑獲鳥の夏」から続く一連の京極作品とリンクしており、思い出に浸れるのも嬉しいことです。
ただし、探偵・榎木津礼二郎の特殊な体質を理解していなければ、この物語は理解不能です。
家柄、美貌を兼ね備え、天才的な喧嘩の強さに加え、他人の記憶が見えてしまうという能力ですから、まさに無敵です。
京極先生もずいぶんと特殊なキャラクターを登場させたものです。

「京極堂」の主人である中禅寺秋彦から、「榎木津とつき合うと、恐ろしい勢いで馬鹿になるから…」という忠告を受けていながらも、どうしても巻き込まれてしまう自称「凡庸な小市民」である本島。
彼を始めとして、他の京極作品でもお馴染みのキャラクターが活躍します。
本当に楽しむのなら「姑獲鳥の夏」から順を追って読むのがお勧めです。

事件に振り回される本島や益田たち、
京極堂の仕掛けと謎解きも見事、
榎木津の暴れっぷりは最高、
最後には木場修までも巻き込んで、
最高です。

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2007年5月10日 (木)

「後巷説百物語」 京極夏彦

文庫化を待っていた一冊です。
「巷説百物語」、「続巷説百物語」と読んでいましたので、わくわくしながら手に取りました。

後巷説百物語 (角川文庫) Book 後巷説百物語 (角川文庫)

著者:京極 夏彦
販売元:角川書店
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時代は維新後の明治初期。
物語は、4人の若者達の妖怪談義から始まります。
そして、彼らが相談に行くのが、薬研掘のご隠居こと「一白翁」。
彼らが遭遇して悩んでいた出来事も、「一白翁」が過去の文献や経験等を語ってくれる事柄を参考にして、なんとか解決していきます。

実は、「一白翁」とは「山岡百介」であり、彼ら四人の相談事についても、過去に「御行の又一」達がかかわっていた事件であったりするのです。

特に「赤えいの魚」については、以前ビデオ「怪」の「赤面えびす」を見ていましたので、読んでいると映像が浮かんで来て、より一層楽しめました。
各エピソードにて、再び又一の仕掛けが堪能できます。

それから栞と一緒に本に挟んであった「巷説百物語シリーズ解説書」。
事件ごとの年表や相関図など、これが嬉しかった。
また読み直してみようかという気になります。

今度は「前巷説百物語」の文庫化を待ちます。
その後も書き続けていただければうれしいのですが…。

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2006年11月15日 (水)

「陰摩羅鬼の瑕」 京極夏彦

初めて文庫版「姑獲鳥の夏」を読んでから、新書版「塗仏の宴・宴の始末」まで、駆け足で読んできた「京極堂シリーズ」。
今回は文庫化を待って、熟考した上での購入となりました。
いつも通りの厚い本ですが、ひさしぶりのこの感じ、今回は読むのにも時間をかけ、噛みしめながら読もうと思いました。

文庫版 陰摩羅鬼の瑕 Book 文庫版 陰摩羅鬼の瑕

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
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白樺湖畔の「鳥の城」と呼ばれる洋館。
そこに嫁いでくる花嫁は結婚式の翌朝には殺されてしまうという。
しかもそこには殺人犯人は居ないのだ。
今また五人目の花嫁が結婚式を迎えようとしている。
探偵・榎木津、小説家・関口、退職した刑事・伊庭らが、それぞれの想いをもってこの事件に巻き込まれていく。

各人によって語られる物語。
いつもより少しだけゆっくりと、理解しながら読んでいきます。
この文体も、各キャラクターも、懐かしい。
できるだけ読み飛ばさぬよう注意しながら、とはいっても中盤は少々きついところがありました。
でも、これを理解しておかないと最後に登場するであろう「京極堂」の憑物落としを充分に堪能することができないので、ゆっくりと数日をかけて読み続けました。

でも物語が後半に入り、結婚式になるともういけません。
まさか、いやこの展開だとやっぱり…。
なんとなく想像はできているのですが、本当にこんなことが…。
読むのを中断することができず、結局深夜までかかって読みきってしまいました。
「京極堂」の憑物落としはあいかわらずで、こちらの心まですっきりとさせてくれます。
ただし、これもあいかわらずですが、人間の哀しさのようなものも感じてしまいます。
ゆっくりと味わったためか、「京極堂シリーズ」の中では、最も内容を良く把握できた作品となりました。
(でも、人に説明するのは難しいだろうな。とても信じてもらえないでしょう)

考えてみると今までの「京極堂シリーズ」、読むのに夢中で、肝心の物語の方をおろそかにしていなかっただろうか。
改めて思い出してみると、「あらすじ」を忘れていたり、たぶん混同しているだろうなという可能性が高いと思われます。
とはいっても、あの厚さの本を新たに読み返すのも…。(-_-)
何かの機会に読み直してみるのも良いかもしれませんね。
今回の「陰摩羅鬼の瑕」、良かったです。

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2006年11月12日 (日)

「嗤う伊右衛門」 京極夏彦

出張するにあたり、久しぶりに京極夏彦作品を読みたくなりました。
文庫版「陰摩羅鬼の瑕」を読もうかなと思っていたのですが、外で読むにはとても厚くて大変そうです。
3冊に分かれている分冊文庫版「陰摩羅鬼の瑕」という手もありますが、どうも分冊文庫版は表紙などのデザインが好きになれません。
(分厚い装丁は、読んだ後飾っても楽しめますし)

嗤う伊右衛門 Book 嗤う伊右衛門

著者:京極 夏彦
販売元:角川書店
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30893344_2 ふと目にしたのが、この「嗤う伊右衛門」。
 そういえば、これはなぜか読んでいませんでした。
 実際には左の表紙の本でしたが、なかなか良い感じです。
 やっぱり表紙はこの妖怪シリーズ?が最高です。
 ページをめくると、そこには見慣れた「小股潜りの又市」も登場します。
 厚みも手ごろですし、これに決定となりました。
 


「巷説百物語」に登場する又市を別にすれば、あとは原作にも登場している(であろう)人々が登場します。
原作の「東海道四谷怪談」とは少々設定が違っているようですが、各人物のキャラクターについては、京極堂風にうまく練り上げられています。
古い文体についても、初めて「姑獲鳥の夏」を読んで以来、馴染みのあるものです。
そんなこともあり、前半は軽快に読み進めていくことができました。
しかし、物語も半ばを過ぎると話は陰湿というか陰鬱というか、読んでいるこちらまで胸につかえるものができるような…。

終盤で真相ともいうべき事柄が明らかになる(と思われる)のですが、胸のつかえは消えるものの、人の哀れさをあらためて感じることとなりました。

ひさしぶりに京極作品を堪能しました。
世に知られている古典をこのような形でリメイクするというのもなかなか良いものですね。
「陰摩羅鬼の瑕」もそのうちに…。

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